東京都の水道水から有機フッ素化合物(PFAS) – 汚染が広範囲に
東京都多摩地域の水道水に使われていた井戸水から発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)が検出された問題が、新聞・テレビのニュースで取り上げられています。
◆多摩地域のPFAS血液検査、85%の人が「健康被害の恐れ」米国の指標値超える 市民団体が中間報告 – 東京新聞 (2023年1月31日)
◆発がん性疑い「PFAS」汚染が広範囲に 取水停止の井戸34本、東京・多摩地域 米軍基地関連疑い – 東京新聞(2023年1月3日)
◆発がん性物質PFAS「都は汚染源特定し対策を」多摩地域 都調査で21自治体検出 – 東京民報(2022年12月25日)
PFASは水や油をはじき、熱に強く、自然界でほぼ分解されないため、人体や環境中に長く残る。その為、「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」とも呼ばれいています。PFASの1種であるPFOSとPFOAは泡消化剤や撥水加工品に使われ、2019年にストックホルム条約で製造・使用が禁止されています。
問題になっている東京の井戸水の汚染源は不明ですが、米軍横田基地(福生市など)内で長年にわたり大量に土壌に漏出したPFASを含む泡消火剤との関連が疑われています。神奈川県や沖縄県内の米軍基地内や周辺でも、高濃度での検出が相次いで発覚しています。
ご自宅で井戸水を使用されていなくても、汚染は水道水に影響します。なぜなら東京都多摩地域の水道水は、全体の配水量の1〜2割程度を井戸で取水する地下水が占めているからです(残りは河川水を使用)。
人体への影響では胎児の低体重、免疫系の障害、腎臓がん、甲状腺疾患などのさまざまな深刻な健康被害と関連しているとされています。
有機フッ素化合物(PFAS) 泡消火剤や撥水加工品などに使われる合成化学物質の総称。水や油をはじく性質があり、1950年代から家庭や空港などで泡消火剤や塗料、フライパンのコーティング等、広く使われていたが、自然分解されにくく、人や動物の体内に蓄積されやすい。がんや心疾患による死亡リスク上昇との関連や、出生体重が減少する恐れが指摘され、近年、国際的に使用の禁止や規制が進む。国内では20年に暫定目標値として、PFOSとPFOAの合計を水道水1リットル当たり50ナノグラム以下と設定した
健康被害が懸念されるPFASですが、浄水器で取り除くことが可能なのでしょうか?
アメリカでのPFAS問題は、1999年の化学メーカー・デュポン社の工場の廃液による汚染訴訟に遡り、7万人の血液検査が行われ、PFASが腎臓がんや潰瘍性大腸炎などの病気の原因となったことが明らかにされています。
バイデン政権は、PFASの規制強化の方針を発表しており、アメリカの環境保護庁(EPA)は2022年6月15日、飲料水のPFASの基準を、従来の1㍑あたり70ナノグラムから、0.004~0.02ナノグラムへ約3000倍、厳しくするとしました。
そんな米国でPFAS問題を主導する環境保護庁(EPA)はPFAS除去手段として以下の浄水方法を公表しています。
- 活性炭処理(GAC) 効果はある – effective
活性炭は、多孔質で汚染物質が吸着する表面積が大きいため、効果的な吸着剤といえる。但し、PFOAやPFOSのような長鎖PFASによく効くが、PFBSやPFBAのような短鎖PFASはそれほどうまく吸着させない。使用する炭素の種類、炭素床の深さ、水の流量、除去する必要のある特定のPFAS、温度、水中の有機物や他の汚染物質、成分の程度と種類によって、一定期間効果を発揮することができる(濾過方式なので使用に伴い、漸次除去性能が低下する)。 - イオン交換処理 効果はある – effective
PFASのマイナス電荷イオンは、プラス電荷の陰イオン樹脂に引き寄せられます。プラスに帯電したアニオン交換樹脂(AER)は、多くのPFASに対して高い処理能力を持つことが示されていますが、一般的にGACよりも高価。GACと同様、使用する樹脂の種類、樹脂床の深さ、水の流量、除去する必要のある特定のPFAS、温度、水中の有機物や他の汚染物質、成分の程度と種類によって、一定期間効果を発揮することができる(濾過方式なので使用に伴い、漸次除去性能が低下する)。 - 逆浸透膜(RO) 非常に効果的 – extremely effective
米国の環境保護庁(EPA)が、家庭で使用する最善の処理方法(extremely effective)として推奨しているのが、この逆浸透膜(RO)による処理方法。
推奨されている3つの処理方法は何れも最大99%のPFAS除去が可能な処理方法として公表されていますが、逆浸透膜浄水器は特に強く推奨されています。
逆浸透膜での処理に於いては、GAC及びイオン交換ではPFASを吸着させて除去していくのに対し、ROでは膜を使った分離であり、除去されたPFASは廃棄されていくので、理論的には蓄積されません。それらが、GAC及びイオン交換に於いては「一定期間」有効とのコメントがつき、逆浸透膜に於いては「非常に効果的」とコメントされた要因と思われます。逆浸透膜が有効に機能する期間は、この分離という方式により、濾過方式比べ格段に長くなっています。