昔、日本では「水と空気はただ」という考え方があたりまえでした。きれいな水と空気がごく普通にあったからです。都会を流れる汚れた川でも、その水源地帯では、そのまま手ですくって飲めるような水でした。美しい自然がそこには存在していました。しかし、今、水の汚染が大きな問題になっています。

流域を下るうちにその川には様々な形で汚染水が流れ込んできます。家庭からの雑排水、工場からの排水、ゴルフ場からの農薬や化学肥料・・・・・。水道水は、時にはそのような汚れた水を原水にして浄水場で処理してつくります。

また、予期せぬ原子力発電所の事故により放射性物質の飛散から水道水へ混入した事件は、安全の観点からは多いな危機を発生させました。

水道水に求められるのはまず「安全な水」ということです。そして、いまや安全性だけではなく、「おいしい水」であることも求められます。原水の汚れがひどい、水道水が「まずい」地域では浄水器の設置など自衛策も必要になります。

水道水中の主な危険物質

地下水と病原性大腸菌O-157

もともと人は大地から湧き出した水や汲み上げた地下水を飲んでいました。地下水は雨水が地上で濾過されてきれいな水になったものです。その地下水が汚染されて飲めない地下水が増えています。地下水は近所で有害な排水などで汚染の影響を受けやすく、特に大腸菌に汚染されていることがあります。大腸菌がいるという事は病原菌も含まれていることが多いのです。つまり、大腸菌を含んだ水を飲むと、他の菌からの病気、とくに伝染病にかかることがあるので怖いのです。病原菌を調べないで大腸菌を調べるのは大腸菌の方が調べやすいからです。

大腸菌そのものはほとんど病気を引き起こしません。ただし、病原性大腸菌と言って強い毒性を持ち大変な下痢を引き起こすものがあります。井戸水から病原性大腸菌O-157が検出され、たくさんの死者病人を出しています。

地下水を汚染する化学物質

地下水に入り込むのは大腸菌だけではありません。トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンのような化学物質に汚染された地下水が増えてきています。トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンは金属部品を作る会社やクリーニング店などが溶剤や洗浄剤として使い、各地で地下水汚染を引き起こしています。たくさん含まれている水をとり続けると肝臓や腎臓に障害が出てきます。また、発ガン性もあると考えられています。

地下水の硝酸性窒素の増加も危険視されています。硝酸性窒素とは、農地で過剰に用いた窒素肥料や畜産の排水、家庭排水などから供給された窒素化合物が土壌中で徐々に分解されてできるものです。硝酸性窒素を含んだ水を赤ちゃんや胃液の分泌が少ない人が飲むと、貧血症などの健康障害が生じます。欧米を中心に死亡例も数多く報告されています。また、胃のなかで発がん性物質を生じやすくなります。

クリプトスポジウム:原虫の一種で、畜産排水等の流入によって水道水源が汚染されることがあります。集団感染を引き起こしたり、アメリカでの死亡例もあります。日本でも、埼玉県で水道水に侵入した例があります。塩素消毒でも死なないので原水での浄化対策が必要となります。

浄水場から起こる要因

水道水は、地下水や河川水を浄化して作られますが、これら水道の原水が汚染されるとそのまま浄水過程に影響を及ぼします。工場排水、農業排水、畜産排水、生活雑排水などが河川に流れ込み、河川の自動能力を超えて、水質の悪化を招きます。リンや窒素を多く含んだ台所排水や洗濯排水などの多くが、そのまま流されると、河川、湖沼の富栄養化を招き、藻類が増殖します。それによって放線菌が繁殖し、またアンモニアやカビ臭を発生させます。浄水過程に多大の影響を及ぼします。

水道水は、細菌汚染を防ぐため、消毒に塩素が使用されています。(いわゆる残留塩素となって残ります。)これは殺菌力が強く人体に影響が少ない事としかも家庭の蛇口まで殺菌効果の持続性が求められる消毒剤です。しかしこの残留塩素は水道原水の汚れがひどくなって、水道水に有機物やアンモニア分マンガンなどの除去の時に塩素と反応していわゆるカルキ臭やトリハロメタン等(消毒副生成物)などを生じさせます。トリハロメタンは有機物が多い、つまり汚れた水ほどたくさんできます。また、温度が高い方がたくさんできるので、夏場は濃度が上がります。発ガン性が指摘されています。

水道水が家庭に到着するまでの汚染

浄水場で水道水が作られても、各家庭に届くまでに汚染される脅威があります。水道管は施設されて以来必要に応じて更新されていますが、膨大な水道管などの更新は工事や費用の膨大さもあって進めるのが大変で、施設の老朽化によって水道水汚染や漏洩が発生しやすくなります。

◆ 集合住宅の水、給水管

集合住宅やビルにおける水道水は、一般の戸建ての住居と違って水道水はいったん受水タンクに溜められてから配水管を通って各部屋へ送られます。マンション建設後何年も経つと受水タンクや配水管自体が汚れ、また破損しやすくなります。汚れやサビなども、水道水を汚す原因となり、水道水が赤水や白水などになって出ることがあります。

◆ 戸建て住宅の水、鉛給水管
かねて水道が施設されるに際して鉛給水管が多く使用されていました。加工しやすく安定した材料として各家庭に多く使われていました。

しかし古くなってくると鉛給水管から鉛が流出しやすくなってきます。pHの低い水ほど溶出しやすいです。鉛は蓄積性があり貧血、消化管の障害、神経系の障害、腎臓障害などへの影響があると言われています。その毒性を鑑みて、2003年にはWHO基準にそって鉛に対する水道水基準が厳しくなりました。ただ鉛給水管からの溶出という末端の家庭に起きる問題であるだけに、鉛管の施設交換などが大きな課題となっています。

※今まで述べてきた放射性物質を含む有害物質は逆浸透膜浄水器で安全なレベルまで除去します。